8月21日、22日の2日間、当研究会主催の夏合宿を開催しました。
合宿と言っても、現在の社会情勢を考えるとリアル開催は難しく、「オンライン」での開催となりました。
夏合宿は今年で3回目。
最初は2019年の夏、泊まりこんでの文字通りの「合宿」でした。
昨年はコロナの影響もあり、残念ながらリアル開催はできず、オンラインでの開催となりました。
そして今年。
合宿の概要をまとめ始めたころ、私はリアルでの開催を期待し計画していました。
でも、ふたを開けてみると昨年以上に、予想を悪い方向にはるかに超えた感染状況となり、リアル開催は断念せざるを得ませんでした。
開催前の1か月、私は毎日のように感染状況を注視しながらいろいろなパターンを想定し開催準備をしていました。が、リアル開催をしたいという淡い期待は日に日に消えていきました。
参加者の安全を考えると、オンラインでの開催は最善の選択であり、また、オンラインという新たな場で学ぶ経験は貴重なものでした。
夏合宿で得られたもの
今回の夏合宿のテーマは「再決断療法をよーく理解しよう!」でした。
再決断療法は、交流分析(TA)とゲシュタルト療法を統合した心理療法です。
クライエントが幼児期に行った「早期決断」を、今現在、子ども(C)の自我状態にあるときにやり直す(再決断)する方法になります。
再決断療法は集団療法であり、通常、グループ内での個人ワークの形で行われます。
集団療法として行うことにより、様々なメリットがあります。
よって、リアルの会場で行うのが基本となります。
今回はそれができないので、講師の先生方と相談しながらオンラインで開催する選択をしました。
再決断療法をオンラインで行ってリアルで行う場合と同じように体感できるか、未経験の試みであり、その効果は未知数でした。
ただ、ポジティブに考えれば(視点を変えれば)、新しいことへのチャレンジでもあり、新たな場の創出につながる可能性を秘めています。
結果としては、チャレンジしたことで得られたものもあります。
100%リアルと同じ状況ではなかったものの、オンラインでできる範囲もわかりました。
リアルでしかできないのではなく、オンラインでもできるんだ、ということがつかめたことは私にとって大きな経験となりました。
何ができて何ができなかったのか整理していけば、今後、新たな心理療法の場が生まれるかもしれません。
新しいことにチャレンジしたこと、そしてベストを尽くしたことで、ひとつの「学ぶ」形ができたことも、私にとっての大きな経験となりました。
被験者(クライアント)として
今回は再決断療法の被験者(クライアント)としても参加しました。
オンラインではありますが、オープンな環境で自己開示するとき、自分にどのような反応が現れるか、期待と不安が混ざりながらの参加となりました。
実際に体験した際は、講師(セラピスト)の質問に対し、自分が今感じていること、気づいたことを、そのまま話すことができました。
振り返ると、講師の先生(セラピスト)への信頼が十分にあったこと、この合宿への参加者の方についても、一定の安心感が私の中にありました。
セラピーが進む中で、今の自分と対峙したり、過去に戻り過去の自分と対話したり、母親と対話したり、いろいろな場面を体験しました。
そのひとつひとつが、これまで経験したことの無い、新鮮なものであり、考えたこともない想定外な場面もありました。
それでも、これは話したくない、と感じることはなく、その時頭に浮かんだ思うままの、素直な反応ができたと感じています。
最終的に、私の相談に対しての答えが得られ、私としては満足の結果が得られました。
ワーク終了後に、参加していた人がはっきりわかるくらい、私は、にこやかな、スッキリした表情に変わっていたようです。
このクライアントとしての実感や感覚も、実際に体験してみないとわからないものでした。
体験することで、クライアントとしての自分が何に反応しているか、何を考えているのかがわかり、また、セラピーが終わった後の安堵感はとても心地よいものでした。
この感覚は、ひとつの体験として、貴重な学びとなりました。
再決断療法の手法や内容を伝えることはできなくても、クライアントとしての経験、何が起こったのか、自分の変化を話すことはできます。
再決断療法を体感したこと、また、オンラインでもここまで感じられる(自分の体験、体感)という体験は、貴重な学びとなりました。
大きな壁が前にあっても、その壁を乗り越えるチャンスがあるのであれば、それを逃さない、チャンスを活かすことが大切であると実感できる体験でした。
世界のTA窓 特別編
今回の合宿にはもうひとつ大きなテーマがありました。それは「世界のTA窓 特別編」ということで、イギリス在住のMaryCox先生の講演です。
「世界のTA窓」は今回で3回目。
世界で活躍する先生のお話を聴く機会を得られやすいのは、オンラインならではです。
講演の前半はCox先生のTA Journey。
先生のこれまでの人生のお話は、とても興味深いものでした。
人の人生についてをお聞きするのは、ワクワクする刺激的なものです。
後半は、Cox先生の論文をもとに、自我状態について、Q&A形式でのレクチャーでした。
今回、お話をお聞きしていた時、今までは理解がぼんやりしていたところについて、“あーそういうことか!”と、明確にわかったことがありました。
まだまだ、理解が追い付いていないところも多々ありますが、今後の楽しい「課題」が得られた感じで、ワクワクしている自分がいます。
また、彼女のレクチャーを聞いていて明確になったことは、自分の偏った思考です。
文章を読んで理解していたことが、実は考え方自体が逆だった、ということがわかったとき、驚きと目の前がパーッとクリアになっていくように、すとん! と腹落ちしました。
Cox先生の論文に、上記の図が使われています。
私は、これまで学んできた自我状態モデルを基準にして、左側の図の意味を理解しようとしました。
正しくは、左側の図をよりわかりやすしたものが右側の自我状態モデルとなっている、というTAの基本、自我状態の考えが生まれたときの解説でした。
これについては、おそらくレクチャーを受けない限り、自分では気がつかない(気が付けない)ものだったので、このように話を聞いて学べることは本当に貴重だと感じました。
知っている、わかっている、本当に?
知っているから、それ分かっている、と思ってしまうことは学び(成長)を妨げると言われています。
今回の夏合宿でも、面白い体験ができました。
TA Journeyを聴きながら、手元にあった「ギスギスした人間関係をま~るくする心理学 エリックバーンのTA」をパラパラめくっていると、え、こんなことが書いてあった! と驚く内容を見つけました。
と言っても今までそのページを読まなかったわけではなく、何回も読んでいるにもかかわらず、私の頭には入っていなかったのです。
人はアンテナを張っている情報は認識するけれど、アンテナを張っていない情報は右から左にスルーします。
その時は読んでいる(見ている)けれど、頭の中には何も入りません。
今回TA Journeyを受けたことで、得たい情報に対するアンテナを張り、必要な情報がゲットできました。
情報を得た時、もっとしっかり読んでいなかった、残念。もっとしっかり読まなきゃ! と思ったか? そんなことはありません!
今、得たいものが手に入ったので、残念な気持ちはちょっとありますが、必要な時に必要な情報が得られた満足感があります。
渡邊康弘さんの著書「ものの見方が変わるシン・読書術」に、本の新しい読み方(読書術)が書かれています。
その中に、「自分のため」に読む読書術として、
「全部読まなくてもいいし、気に入った一行でも見つかればいい。斜め読みでも、飛ばし読みでも、キーワードを繋げて読むと言った読み方でもOK」
とあります。
このフレーズは、読書のハードルを大きく下げてくれる、私にとって読書の許可と保護を与えてくれました。
論文や書籍を読むことは学習していくうえで必須のスキルですが、このような読書術でいいんだという許可は、囚われていた「本の読み方」から解放され、今後の学習の一助となりそうです。
コルブの経験学習サイクル
現在私は、CTAトレーニーとして学習をしています。
学習と言っても、受動的に学ぶだけではなく750時間の実践が求められます。
インプットに加え、アウトプットが必要となります。
そんな私にとって、コルブの経験学習サイクルは学び方のテンプレートになります。
出発点は、「経験」すること。
うまくいく経験もあれば失敗もあるでしょう。
その経験をどのように活かしていくのか?
コルブの経験学習サイクルは、その答えを提供してくれます。
- 経験 :やってみる。身体を動かす。経験する。学ぶ。
- 振り返り :○か×か?。いろいろな観点から振り返る。
- 概念化 :自分の理解、他者も理解できる言語化。新たな意味付け。
- (再現性、強化、防止、修正、改善につなげる)
- 新しい試み:具体案を準備し、次の経験へつなぐ。
この経験学習サイクルを活かし、楽しく学びを続けていきたい!
夏合宿を終えて、改めて感じているところです。